株式会社個人商店|光山 英明

繁盛店をつくれたのは、お客さんや店を愛していたからだと思う。組織のつくり方も、店舗展開のやり方も学んだことはない。それが強みであり弱みでもあるが、私にはそれが合っていた。

光山 英明(みつやま ひであき):大阪府出身。小学校4年生から硬式野球をはじめ、上宮高校では甲子園ベスト8進出。中央大学を卒業後、大阪の卸酒屋に就職。2002年に同社を退職し、東京吉祥寺にてホルモン店『わ』を開業。オープン当初より黒字経営を続け、現在もなお繁盛店として人気を維持。2012年「肉山」をオープン。1都道府県1オーナーというスタイルを確立し、「地域に愛され続ける店を作る」を理念に活動。

「どうすれば注目されるか」「売れるためになにが足りない」と考えるビジネスマンは多いです。決して間違ってはいませんが、この考えに異論を唱えるのが株式会社個人商店の光山英明氏。飲食店がしのぎを削る吉祥寺。ホルモンの店と聞けば『わ』、赤身のお肉と言えば「肉山」の名前が上がる。次々と繁盛店に仕上げ、全国のコンビニでも名を轟かせる光山氏にビジネスの心構えをお聞きしました。

何ひとつ経営を知らずに起業した

─今の光山さんから見て、社会人になった20代の頃にもっとこれをやっておけば良かったなと思うことはありますか?

一度は大手の飲食企業で働いてみたかったですね。私は大手の当たり前をなにも知りません。正直なところ、個人経営というのはなんでもありなので、好きにやってハマったお客さんとしか接してきていない。結果的にはそれなりに繁盛しましたが、「事業としての教育」を受けたことがない。後悔はしていませんが、王道のスキルを経験してみても良かったかなと思うこともあります。

─お店を始める前に飲食店で働いた経験はまったくなかったのでしょうか

2002年に大阪から上京して、大手を何社か受けたんですがすべて落ちました。手羽先の鳥良は、本社面接にまで行ったのですが見事に不合格。いま思えば落として正解。私が面接官でも当時の自分では採用しないと思います(笑)。

就活はしたい人だけすればいい

─大手に入って経験しておけば良かったなと思うのはどんな部分ですか

組織の仕組みや店舗展開など色々と学びたかったです。当時は、ワタミが1ヶ月に何店舗も出店していた時期でした。また、ワタミ出身の人は独立後もしっかり店舗展開されているんです。一方、私はお金もオペレーションもわからず、マンパワーと雰囲気だけでやってるような感じ。それがたまたま当たって繁盛店になっただけなんです。

「現代は情報も多いので、以前のように修行しなくても得られる知識やスキルはある。ショートカットできる部分はしたほうがいい」

─たまたまなんですね。とはならないですね(笑)。これから社会に出る学生さんや若い世代にも企業での下積みはおすすめでしょうか

今はネット社会。情報も溢れてますから、挑戦していきなり当たる時代でもあります。ですから就活せずに起業しても良いですし、失敗したらまたやり直せばいい。現在はすでに、終身雇用や年功序列は崩壊しています。ですから私は10歳の娘にも、なにをやってもいいよと言ってます。

長く愛されるお店はテクニックに頼らない

─起業のためにスキルを身につけたり、経験を積んだりというのは就職をしなくても独学で会得できると思いますか

本人次第だと思います。ただ、堀江貴文さんが発言した「寿司に10年の修行は必要ない」については少し異論があります。確かに、技術や運営などは10年の修行は不要かもしれませんが、礼儀礼節だけは徹底的に身につけるべきです。様々な飲食店を見ていても、行儀が悪くて失敗していった人をたくさん見てきました。せっかく味は美味しいのに、人としての立ち回りや経験値が足りないというか。スキルだけに頼らず、礼儀礼節の大切さを知ってほしいと思います。

今は効率化やデジタルに傾倒が目立つ時代ですが、いずれ一周して原理原則が戻ってくると思います。私がツイッターをやめたのはそういうところで、バズらせて流行っても長期的には意味がないんです。お店に愛がない経営者は、お客様にも商品にも愛情を持っていません。テクニカルな時代はいずれ終焉を迎え、人間的な努力や実力が評価される時代が戻ってくると思っています。

─たしかに中身がないお店はなんとなく伝わってきますね

たとえば、コース料理とペアリングのお店で、前菜にはペアリングをつけていない店があります。「前菜に合わせる飲み物は何にされますか?」と聞いてきて、それが別料金になっているわけです。お客さんとしては、コースもペアリングも頼んでいるのに、追加でお金を払うのかと思いますよね。それって店側が「いかに儲けるか」を考えている姿勢の表れなんです。

売り上げが伸びて安心する経営者は素人

─味は大前提として、光山さんが「これ」と思う経営理念はどういったお店でしょうか

例えば、居酒屋「のんき」の荻野さんなどを見ると、礼儀礼節をわきまえた骨太で愛があるお店を運営されています。教育がしっかりしていて、いかにお客さんを喜ばせるかを考えている姿勢が伝わってきます。ですから、売り上げがじりじりと上がり続けている。しかも、一般的な飲食店と比べてかなり伸びていても満足も安心もしていないんです。こういう店は強いです、まだまだ伸びるでしょうね。

「結果を出し続ける店は、売り上げが伸びたり有名になったりしても経営方針がまったく変わらないんです」

─光山さんが手がけたお店も愛情が土台にある空間として完成されていると思います

私の店は初速は良いのですが、店長に力がないとその後に失速する弱点があります。

実際に流行ると、目の前をたくさんお金が通っていくので、たった半年の数字でも安心してしまうんです。流行った、儲かった、俺すごいという素人感覚では、長期的にはまったく通用しません。どんなに儲かったとしても、礼儀礼節を重んじて愛があるお店をつくる。これがお店を長く繁盛させ続けるためのコツです。

─様々な繁盛店や撤退するお店を見て、実際に長く経営されている光山さんだからこその金言ばかりでした。飲食店を開業しようと思っている方にこそ知っていただきたいですね。今日はありがとうございました。

会社名株式会社個人商店
代表光山 英明
Webhttps://note.com/wa1115/
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