アメリカでの経験が、進むべき道を決定づけた。起業に向けて人生を逆算し、あえて苦手な仕事を選択した。人生は、世間のレールを選ぶのではなく、自らデザインするもの。
社会で生きるためには、様々な場面で苦手に遭遇します。苦手な作業をしたり、苦手な人と打ち合わせをしたり、これは仕事において避けられないこと。今回は、そんな「苦手」について、FUNGOの関さんに独自の考え方を聞くことができました。
関 俊一郎(せき しゅんいちろう):長野県諏訪市出身。高校卒業後、カリフォルニア大学バークレー校へ留学。帰国後はコンサルティング会社に入社。のちにアメリカで出会ったサンドイッチとカフェラテが忘れられず、1995年に「FUNGO」1号店を東京、三宿にオープン。さらにアップルパイ専門店・日本酒・イタリアンとさまざまな事業を展開。
「個」を追求し、カリフォルニア大学へ留学
─関さんはどんな学生時代を過ごされたのでしょうか
スポーツが好きで色々やってましたが、特に高校から始めた御諏訪太鼓は、道場に通って本気で取り組んでました。私の世代は一種のベビーブームで、異常なほど生徒が多かったんです。そういう意味では、自分のアイデンティティを探していたのかもしれない。いま振り返ってみると、他人とは違う“個”を確立したかったんでしょう。
─高校を卒業後、なぜUCバークレーに留学されたのでしょうか
西部邁さんという経済学者がUCバークレーの客員教授だったのがきっかけです。西部さんはアメリカに移住後、社会問題を取り上げた本を出版された。私は高校時代にその本に出会い、人種、貧困、ナショナリティ、治安、LGBTQに初めて触れたのです。長野にいた私にとっては衝撃的でしたし、非常に興味を持ちました。また、当時の私は和太鼓に取り組み、16歳でニューヨークやカナダなどを遠征していました。そういう意味では、すでにアメリカへの夢を抱いていたとも言えます。
何を選択するかより、最後までやり切る力
─関さんが留学された当時は、いま以上に差別や偏見などの困難があったと思いますが、それでも行って良かったと思いますか
もちろん良かったです。例えば、入学の時点で競争率は800倍だったので、諦めていれば渡米は実現してない。改めて当時の自分を振り返っても、かなり覚醒していたと思います。あの留学では、困難から逃げ出さずにやり抜く力を培ったと思います。
「諦めるのも選択肢の一つですが、挑んで何かをつかめるなら、叶わなくても無駄にはならないと思っています」
─卒業後は帰国されていますが、アメリカに残る選択はなかったのでしょうか
残ることも考えましたが、自分としてはやりきった感もあったので帰国しました。向こうにいれば違う人生になったでしょうけど、人生は選択の連続です。良いことも失敗も含め、すべての積み重ねが現在の自分。あの頃は十分すぎるほど頑張ったと思えるし、帰国したことに後悔はありません。
─帰国後はどうされたのでしょうか
小規模のコンサルティング会社に就職しました。複数の名だたる企業から内定をもらいましたが、将来的には起業を考えていたんですね。そんな自分に足りないのは営業力だと思い、会話が必須となるコンサルティング会社を選びました。
意図的に苦手と触れることも武器になる
─目指したい自分をイメージし、足りないスキルを肉付けしていったということですね
その通りです。スキルがないから諦めるではなく、無いなら身につければいいというのが私の考え。諦めないために努力をするので、私はこれまでの行動で後悔したことがありません。また、私が今でも頑張れるのは「まだやりきっていない」と思えるからなんです。
─では、若いうちに身につけておくと良いスキルは何かありますか
スキルと言えるかわかりませんが、苦手なことでも必要なら挑戦してみる。私は営業が苦手でも、起業のために営業職を選びました。私は営業スキルが欲しかったわけですね。現代は苦手なら避けようという風潮がありますが、社会ではすべてが避けられるわけではない。そういう意味では意図的に苦手と関わったり、挑戦したりするのもスキルに繋がると思います。
既存のレール以外に人生の面白さがある
─確かに、苦手から逃げない姿勢は武器になるスキルだと思います。では、これから社会に出る学生や若い人に向けてメッセージがあればお願いします
今はインターネットを活用すれば、なんでも簡単に調べられます。ただ、スマホでサクッと調べても、本質までは理解できないと知ってほしい。現代は仮想通貨やNFTなど、新たなものが生まれている一方で、日本は国際的な競争力で負けています。これは多くの若者が、“今ある職業の中から仕事を選んでいるだけ”というのが要因の一つ。基本的な情報はネットで理解できても、描く世界観は自分で考えることが重要だということです。
「世間や他人の作ったレールを生きるのではなく、自分で人生をデザインする感覚を持って欲しいですね」
─関さんは、若い世代がもっとエネルギーを持つべきともおっしゃっていました
おっしゃる通り。特に若い人たちは、今を大切にし、今の瞬間に集中してほしいと思ってます。現在の大谷翔平があるのも、学生の頃から今に集中してきたからで、現在も今に集中しているはず。当時、飛び級でUCバークレーにいた12歳の同級生は、常にどっさりの本を見ていました。筋ジストロフィーの教授もいて、棒を持って精力的に講義を行なっていました。いずれ亡くなってしまうと知ってるのにです。まだ子どもだとか、いずれ亡くなるなど気にせず、今の自分を一生懸命に作り上げていく。若者にはそんな意識を持って欲しいです。
憧れと書籍に感銘を受け、アメリカ留学を決めた関さん。「スキルがないから諦めるではなく、無いなら身につければいい─」この考え方は、苦手から逃げる現代の風潮に一石を投じ、同時に勇気を持つメッセージになったのではないでしょうか。
会社名 | 株式会社 ファンゴー |
住所 | 東京都世田谷区三軒茶屋1-18-11 1F |
代表 | 関 俊一郎 |
設立 | 1995年12月 |
Web | https://www.fungo.com/m_top.html |