やりたいことが見つからないのであれば、まずはひとつのことを徹底的にやり切る。本気で打ち込むことで何かを感じ、何かに出逢い、次に進むべきステージが見えてくる。
今や世界を席巻する日本のアニメ、ワンピースや呪術廻戦とのコラボを実現し、世界の架け橋を目指すメイドインワールド 。サッカーに没頭した学生が、なぜアパレル界を代表するブランドを立ち上げるまでに至ったのか。株式会社CUORE JAPANの金 栄澤(キムヨンテ)CEOに話を聞いた。
家庭環境が生んだ起業の選択肢
─まずはヨンテさんの学生時代についてお聞かせください
「これ」と思ったことに打ち込んでしまう子供でした。特に、小学校からサッカーにのめり込んでおり、高校サッカーの名門でもある朝鮮学校では1年生でレギュラーを獲得していました。実力的にもJリーグを目指せると言われたほど、好きなことを極める性格です。
─プロスポーツを目指せる青年が起業に至ったのはなぜでしょう
私が高校2年のときに父が他界し、当時は姉が大学生で妹が中学校3年で進学のタイミングでした。もともと経済的に裕福ではなかったので、家計もさらに厳しくなるだろうなと。その結果、家族を守るのは自分しかいないと強く感じたんです。ただ、サッカーを諦めるような感覚よりも、自然に起業したいという感情に切り替わっていました。
環境で身についた対人関係のスキル
─学生のときに経験したことで現在に活かせていることはありますか
それはもう人間関係がいちばん大きいですね。サッカー部だったこともありますが、当時は目上が絶対というほどの縦社会でした。ただ厳しい反面、先輩には敬意を払い、後輩の面倒は見るものという風土でもあったのです。だからこそ、現在も自然に目上の方を立てることができますし、若い人にも敬意を持って接することが自然にできます。
改めて社会を見ても、生きる上で人との関わりは欠かせないものだと思うんです。仕事でも、1人でやれることなんて限界があります。当時は大変な思いもしましたが、今となっては学生時代の経験に感謝しています。
「敬意を持ったコミュニケーションは、ビジネスはもちろん社会生活において必要不可欠」と語る金CEO。
─学生時代に培ったコミュニケーションが活かされたエピソードがあればお聞かせください
特に大きかったのは、メイドインワールドの立ち上げです。当時は資金的な問題もあり、商品はCAPだけでのスタートでした。それでも、多くの芸能人やアスリートが宣伝の協力を申し出てくれたんです。その後、リリース日に合わせてSNSに投稿してくれたのですが、予想を上回るインパクトで走り出すことができました。
─デザインが良いとはいえ、それほど多くの著名人がなぜ協力をしてくれたと思いますか
それは間違いなく、私が損得で人と関係を持たないからです。「この人とは仲良くしておこう」とか「この人から得るものはないかも」という発想がまったくありません。純粋に友人はかけがえのない存在だし、すべての人に敬意を持つことが重要だと思います。それは仲間に限らず、ショップの店員さんや取引先であっても同じです。一言で言うと「思いやり」というか、誠意ある関係が周りの協力を得られた要因ではないかと思います。
お金は大切なツール。汚いものではない
─では、逆に学生時代に学んでおきたかったことはありますか
社会に出て気づいたことですが、道具としてのお金について学んでおきたかったです。
なぜか、日本には「お金=汚い」「稼ぐ=卑しい」というイメージがあり、当時はいま以上に強かった気がします。ところが、社会に出るとお金の問題を避けることはできません。それは投資や運用だけでなく、起業や新しい事業などの挑戦にはお金が欠かせないツールですから。もし、当時から「お金=ツール」という思考があれば、大学で経営を学ぶという道を選んでいたかもしれません。結果として、私はビジネスの実践で学ぶことになりましたが、学生の人は今からお金の勉強をしておくことをおすすめします。
全力で取り組んだ先に見える世界
─現在ではやりたいことが見つからないという若者が多いと言われています
まず、やりたいことを仕事にできるのは幸せなことです。そして仕事を選ぶ自由はみなさんにあるわけですから、まずはその環境に感謝してほしい。私で言えば学生時代のサッカーをはじめ、現在も好きなように挑戦できる環境に感謝しかありません。
その一方で、やりたいことが見つからないという声も耳にします。そんなときは見つけようとせず、まずは一つのことに本気で取り組んでみてほしい。全力でやり切ると、必ず何かを感じるし、新たな人やモノとの出会いにも恵まれます。仮に、そこでは結果が出なかったとしても、次に進むべき道というか、新たなステージが見えてくるのです。
─ヨンテさんもはじめはファッション業界ではありませんでした
おっしゃる通り、最初の起業は思い入れがあったわけではありません。たまたま知人に紹介いただいた物件で、BARを始めたのが私のスタートです。始めたからには本気で取り組みましたし、結果的に経営は順調に進んでいました。その後、「自分はこの先なにをしたいのか」と考えはじめ、好きだったファッションの世界で勝負しようと思えたのです。ですから、やりたいことが見つからなくてもまったく焦る必要はありません。
「やりたいことは動かずに探すものではなく、本気で取り組んだ結果として出会うもの」
─新社会人を含め、これからの時代を担う20代の人たちにアドバイスをお願いします
人生は一度きり。過ぎてしまった時間は二度と戻ってきません。だから、まずはどんなことでもよいので徹底的にやり切ってみてください。それでもなにも浮かばないという人は、未来をイメージすることもひとつの方法です。「何年後にはこうなっていたい」とか、お子さんがいるなら「こういう将来にしてあげたい」でもいい。未来の目的地さえ決めてしまえば、今すべきことや進むべき方向がぼんやりでも見えてきます。
特に、パワーに満ち溢れている20代は、のんびり力を抜くタイミングではありません。中途半端な行動に満足して「これでいいや」なんて、決して思わないでほしいです。仮に苦しい状況にいても、あきらめずに行動すれば必ず道は開けてきますから。
「やってみたい」という感情に取り組む熱量が、最高の未来を作ると語った金CEO。今後も(株)CUORE JAPANは世界に発信を続け、まさにメイド・イン・ワールドを体現していく。
会社名 | 株式会社CUORE JAPAN |
住所 | 東京都台東区東上野1-13-10 Wada Bldg 1F |
代表 | 金 栄澤 |
設立 | 2011年9月30日 |
Web | https://made-in-world.jp/ |