そもそも社会経験のない20代はスキルなんてない。まずは圧倒的な量に取り組み、実績と経験を持って30代を迎える。「質」に向き合うのはそれから。
仕事には「質と量どちらが大切か」という議論があります。答えはもちろん「両方」ということになるわけですが、20代では両立しないという経営者も多いです。20代の働き方はどういった視点がポイントになるのか、株式会社Parasolの伊藤早紀社長にお聞きしました。
伊藤 早紀(いとう さき):1990年、愛知県出身。名古屋市立大学経済学部卒。人材広告代理店の営業から物流ベンチャーの経理を経験したのち、リクルートコミュニケーションズに入社。2017年、株式会社Parasolに創業メンバーとして参画。マッチングアプリメディア「マッチアップ」の編集長としてサービスを創出。その後、結婚相談所の所長や未婚男女のマーケティング機関「恋愛婚活ラボ」の所長を兼任し、1000人以上の未婚男女に取材。恋愛・婚活・マッチングアプリのスペシャリストとして、MBS毎日放送「初耳学」、テレビ朝日「出川のWHY?」など10本以上のテレビ番組に出演。
お金やキャリアより、やりたいことを優先した
─様々なキャリアを持つ伊藤さんですが、仕事面では親御さんの影響があるとお聞きしました
私は思い立つと、まず実行したい性格なんですよ。キャリア形成や肩書きより、やりたいことを素直にやる点が父に似ているかなと。慶応義塾大学を出た父は、カネボウへ入社したあと日本生命へ転職しています。この辺りまでは、キャリアとして珍しくないと思います。
─珍しいどころか普通にキャリアを形成する流れでも王道かと思います
ところが、その後は地方の和菓子屋に移り、さらに転職して祖父の事業を手伝いながら、仕事を転々としたこともありました。現在は尾張旭市議会員として活動してます。私が若かった頃は、なにを考えてるんだろうと思いましたが、現在は父の気持ちがとても理解できます。父も私も、お金や地位、名声よりも「やりたいこと」を優先したんですね。
子どもにピラミッドの階層があると気づいた小学生
─幼い頃はどんなお子さんだったんですか
印象的なことで言うと、子どもの社会にもピラミッドに似た階層があると感じたんですね。現在の言葉だと陽キャや陰キャのような、1軍2軍ぽい明確なレイヤー。可愛いとか足が速い、面白い、そんな子たちが1軍の階層にいましたよね。その大人の縮図みたいな構図を小学3年の頃に気づいてしまったんです。
当時の私は転校が多かったんですが、転校先で話しかけても上手く溶け込めない空気を経験しました。結局、転校生というのはまだどの階層にも属していないので、周りも様子見しているわけです。ビジネスっぽく言うと、転校したばかりの自分には市場価値がないか、知られていない状況。
「子どもの頃から、大人社会のように対人関係を攻略しようとしていたのかもしれません」
─子どもらしからぬ、大人社会の構図を理解して生活していたんですね(笑)
要は「あなたはどのキャラなの?」という階層がわからない以上、自分からキャラを明確にすれば良いんだと。ただ、当時は足の速さやルックスなどの自信がなかったので、まずは人気のある子たちと話そうと思ったんです。子どもとはいえ、階級っぽいもので差別されたくなかったし、「私は話せば面白い人なんだから」と思い込んでがんばりました(笑)。
─活動した結果、良いレイヤーを獲得できたのでしょうか
中学校でも転校を経験しましたが、今度は馴染めないどころかいじめられました。過去と同じように振る舞ったところ、今度は「馴れ馴れしい」と言われてしまって。ひどい時は、「キモい」とか「死ね」とか言われ、いわゆる便所飯をしたこともありました。ただ、メソメソしても状況は変わらないし、逆にどうやったら嫌ってくる人と仲良くなれるかなと。泣くぐらい辛いこともありましたが、一度も休むことなく無事3ヶ月後にはみんなと仲良くなれました(笑)。
できるかどうかより、どうすればできるか
─中学生で対人関係の攻略というのも、現在の活発な伊藤さんが形成された視点のひとつですね。その後、具体的に仕事面で影響を受けたことはありましたか
大学の時の長期インターンは大きく影響しています。当時は2010年ごろで、まだ長期インターンや報酬のあるインターンという概念が珍しかった時代です。そんな中、私が派遣された先はフルで働いて2万円が支給される会社でした。しかも、仕事も学べてお金までもらえるんだから、むしろ感謝しなさいと言われましたね。
─現代であれば、ブラック労働で問題になりそうな環境です
そうかもしれません(笑)
─勤務内容もブラックなりの厳しさだったのでしょうか
パワハラとか、徹夜させられるとかはないですよ。仕事において、「できなり理由を探すのではなくて、どうすればできるか考えろ」という教えです。ですから、言い訳したり諦めたりは強制的にできなかった(笑)。今でもその教えには感謝していて、おかげでどんな仕事でもやり切れるようになったと思ってます。できない理由を探したところで役に立たないし、そもそもなにも生まない時間がもったいないですから。
─若いときは仕事を選んでいる場合ではないと
とりあえず仕事がいただけるなら、「なんでもやります!」という気持ちで取り組んでいました。インターンや、若いうちはスキルや実力なんて持ち合わせていません。そんな価値を発揮できない時期に仕事を選ぶなんて、機会損失でしかないと思います。また、若い頃の報酬はお金じゃなくて「仕事そのものが報酬」というのが私の考え方でもあります。たとえ小さい仕事でも、その成果が次の仕事や大きな機会に繋がるんです。
20代が持つ最大の武器は体力と行動量
─今を生きる20代や、これから社会に出る学生に伝えたいことはありますか
20代は、ひたすら仕事にフルコミットしたほうが良いです。質が重要という意見もありますが、そもそも社会に出たばかりでは質を作るスキルなんてありません。そのスキルや経験を積むのが20代なんです。圧倒的に量に取り組んで、結果としてたどり着く先にスキルがあると私は思っています。
─技術を持っていないのだから、まずは量で経験値を積み上げろということですね
その通りです。量にコミットできるのは20代だし、逆に先輩たちに勝つ要素って体力だけじゃないですか。実際にスキルが求められるのは30代以降なので、若いときはスキルは二の次でがんばって欲しい。
「スキルがないのに質を追求しても、経験を積んだスキルを持つ人に勝てないですよ」
─確かに、20代の過ごし方で30代が決まると言われています
20代でスキルを手にして30代を迎えるのが最強なんです。40代や50代より体力があるし、20代で作った実績や人脈を活かして勝負できますから。20代のみなさんには、とにかく仕事に全力で取り組んで、自身の市場価値を高めて欲しいですね。
20代は仕事を選ばず、できる方法だけ考えて言い訳をしないこと。さらには経験とスキルを積み上げるタイミングが20代であると。華やかな婚活業界のベンチャー社長の伊藤さんですが、根底にあるものは「ひたむきな努力と行動量」という貴重なお話が聞けました。
会社名 | 株式会社 Parasol /Parasol Inc. |
住所 | 東京都港区芝公園4-6-8 bijin-BLDG. 3F |
代表 | 伊藤 早紀 |
設立 | 2017年1月23日 |
Web | https://match-app.jp/company/ |