自分が興味を持ったものは、とにかく始めてみることが大切。バックパッカーやアメリカ留学の経験によって、のめり込める「好き」を見つけた。
三木 五月(みき さつき):1983年、大阪府出身。高校卒業後、バックパッカーでアジアを中心に旅を重ね、インドでの衝撃が人生の原体験となる。22歳でアメリカ・カリフォルニア州に3年間留学。帰国後にWebデザインを学び、文藝春秋に入社。退職後の2016年、株式会社ニュートラルワークスを創業。
やりたいことが見つからない、または将来への不安で悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「無駄になるのでは」「できないかも」と躊躇してしまうと、自分の可能性に気づかず時間だけが過ぎてしまう。興味に逆らうことなく行動し、様々な経験の中で生きる三木五月CEOに後悔しない20代についてお聞きしました。
途上国のヒッピーカルチャーで変化した価値観
─アメリカの大学へ留学したり、海外でバックパッカーをされたりしていますが、学生時代から英語や勉強が得意だったのでしょうか。
いえ、あまり勉強は得意ではないし、自慢できるような学生生活ではありませんでした。高校も退学してるので、高学歴で起業した経営者とは正反対の経歴ですね。ただ、高卒の資格だけは必要かなと思い、のちに通信制の高校に入学はしました。
─バックパッカーの旅で価値観が変わるほど衝撃を受けたそうですが
衝撃でしたね。父が旅行会社を経営していたので、海外旅行の経験は人より多かったと思います。ただ、それまでは多くの人が訪れる先進国が大半でした。ところが旅は自らの意思だし、バックパッカーって観光旅行とは異なりますよね。初めて触れた途上国は非常に大きなインパクトがありました。経済的には貧しい国なのに、誰もが楽しそうで活力がある。日本のように他人と比べることもなく、自分の人生を生きているんです。
─その後、海外留学をされていますが、どういった経緯でアメリカへ行くことになったのでしょう
とあるタイミングで父から留学を勧められたんです。アジアを放浪している息子の将来を案じたのかもしれません(笑)。アメリカでは語学留学を経て、その後はカリフォルニアのコミュニティカレッジで2年ほど過ごしました。
実働19時間で培ったスキルと経験値
─帰国後はどのように過ごされていたんでしょうか
実は帰国後も目的意識はなく、再びアルバイト生活をしていました。ただ、すでに私も26歳でしたし、年齢的にも社会的な危機感は持っていて。そんな私に見かねたのか、ITの到来を見据えたのか、兄がWebデザインを勧めてきたんです。私は性格的に飽きっぽく、何をやっても続かないタイプだったのですが、Webデザインだけはのめり込んで学んでいました。
「Webデザインに出会うまでは、何ひとつ続かないほど飽きっぽい性格。ただ、すべてに触れたからこそたどり着いたとも言えますよね(笑)」と話す三木氏。
─アジアを放浪していた青年が、Webデザイナーとしてやっと社会人をスタートしたと
最初に入った会社では、毎朝10時から深夜2時まで働き、そのまま朝7時まで先輩にレクチャーを受けてました。一旦は自宅に戻りますが、また10時に出社という超ブラック状態ですね(笑)。当時は、お金をもらいながらデザインを学んでいた感覚だったので、あまり気になりませんでした。
人生ベースで後悔しない道を選んだ
─その後、Webデザイナーとして文藝春秋に転職されています
そうですね。応募者200人以上の中から1つの採用枠を勝ち取りました。まだ若かったですし、使いやすい人材と思われたのかもしれません。さらに、留学の経験を持つWebデザイナーという経歴も決め手になったと思います。
─文藝春秋「NumberWeb」のWebデザイナーといえば、これまでの生活から大きな変化ですよね
ただ、働く中でいろいろと感じることがあって。確かに、文藝春秋という会社は社会的なバリューになります。しかし、一方では形式に囚われすぎというか、カチッとしすぎな社風も感じていたんです。例えば、事故や障害で電車が止まることってあるじゃないですか。WebデザインはPCさえあれば家でもできるのに、それでも出社しろという風潮には違和感がありました。
─出社ありきの風土が、結果的に非効率で非生産的な働き方になっていると
おっしゃる通りです。また、日々の通勤電車にも恐怖を感じました。電車にいる50代くらいの人たちに精気がないというか、希望を持ってる目には見えなかった。このままの働き方を続けたら、いずれ自分もこうなるかもと思うとゾッとしてしまって。以来、なにを決めるにしても、人生スパンで後悔しない道を選ぼうと思いました。
興味を持ったものは深く考えずやってみる
─これから社会人となる学生や、20代へのアドバイスがあればお願いします
「人の信頼を裏切らないようにする」ですね。常に誠意を持って人と接することが重要だと思います。自分の損得よりも、まずは相手のメリットや利益を大切にしたほうが良いですね。例えば、Webデザインというビジネスをする以上、お金を稼ぐことは重要です。だからといって、不要な機能を付加して儲けるような、相手に利益のない行為は問題外だと思います。
「自分の損得を優先する行為は、早かれ遅かれ相手に見抜かれます。結果的に信用を失うし、悪評は人づてに広まるのでやらないほうがいい」
─最近ではやりたいことが見つからないという若い世代も多いですが、三木さんはどう考えますか
興味を持ったものがあるなら、深く考えずにやってみることです。私は農業や雀荘など、あらゆる職種を経験したのちにWebデザインにたどり着きました。次々に興味のあるものに触れたことで、「これを続けたい」に出会えたとも言えます。さらに、違和感に向き合って起業にも至ったわけですから。始める前からやりたいことを見つけるほうが困難だと思いますよ。
10代から20代は様々な経験・挑戦ができる時期。周囲と同じように、卒業後は就職という道だけが正解ではありません。学生時代から現在に至るまで、自分のやりたいことにまっすぐ向き合っている三木氏。人生に後悔したくない人は、その場だけで物事を判断せず、長期スパンで検討すると良いかもしれません。
会社名 | 株式会社ニュートラルワークス |
住所 | 本社 :神奈川県茅ヶ崎市浜竹1-11-56 大阪支社:大阪府大阪市北区堂島2-1‐2 福岡支社:福岡県福岡市中央区赤坂1-14-22 |
代表 | 三木 五月 |
設立 | 2016年12月 |
Web | https://n-works.link/ |