どんな環境でも、悲観的に生きるか楽観的に生きるかを決めるのはいつも自分。人生に失敗はなく、あるのは経験だけ。そう思って生きていたら、いつかはうまくいく。ずっと負け続ける人生なんてない。
若き経営者が数百人に檄を飛ばし、一言一句に耳を傾ける社員たち。その光景を後ろから見守り、グループ全体をまとめ上げる株式会社アローズ代表 二谷誠氏。若手社員から50代の主婦まで、50人以上の経営者を育て上げ、今なおその数は増え続けている。そんな二谷氏が20代の若者に伝えたいメッセージとは。
60社の面接に落ちたことが運命に繋がった
─まずは二谷さんが若かった頃の話からお聞きしてよろしいでしょうか
私は18歳からオーストラリアでワーキングホリデーを経験し、バックパッカーとして24歳まで世界を旅してきました。その間、様々な経験によって人生の視野が広がり、自信にも繋がったと思います。ところが、いざ帰国後に就職活動をしても上手くいかず、面接した60社すべて不採用だったんです(笑)。ここまで受からないと、さすがに自分は社会的な価値がないのかと思いました。結果的に61社目で合格するわけですが、もっと面接対策をしていれば途中で受かっていたとは思います。
─60社の不採用というのはかなり珍しいケースだと思います。無事に採用が決まって、どのように仕事と向き合おうと思いましたか
61社目で無事に採用が決まったので、とにかく全力で働こうと思いました。ところが、いざ合格しても社会経験がない自分は、何から始めれば良いのかわからないんです。そこで、まずは誰よりも多くの本を読み、有能な上司を捕まえてアドバイスをもらいながら働きました。知識の吸収率や素直さでは負けないと決めていたので、上司からはすごく気に入られたと思います。
アドバイスが欲しいなら素直な人になる
─無事に就職が決まって、働く上で何が大切だと思いましたか
特に、社会に出て間もない人はアドバイスを素直に聞くことです。上司になって改めて気づいたのですが、人って意外に頑固なんだなと。せっかく的確なアドバイスをしても、しばらくすると自分のやり方に戻してしまうんです。すると、また「どうすれば良いでしょう」と来るわけですが、そんな人にまた教えようとは思わないじゃないですか。本当の素直さというのは、自己を一旦ゼロにしてアドバイス通りに実践することなんです。そこで状況を見てもらいながら、フェーズごとのアドバイスをもらえば効率的に成長できると思います。
「上司だって人間。素直にアドバイスを聞かないなら親身になってくれません」と話す二谷氏。
─なぜ二谷さんは上司のアドバイスを素直に聞けたのでしょう
自分が無知だという事実を理解していたからだと思います。中途半端に知っていたり、変に自信があったりすると自分の考えで行動しますよね。その結果、どこかで自身のこだわりを優先してしまうから上手くいかないんです。
仕事は労働の対価だけでなくスキルと経験を得る場所
─いつ頃から起業を考えるようになったのでしょうか
当時の上司に勧められたベストセラー、「金持ち父さん貧乏父さん」が自分の人生観の転機でした。このまま労働者としてラットレースを生きるより、自らビジネスオーナーとして生きていきたいと思ったんです。かつてアルバイト先の居酒屋に40歳の上司がいて、忙しすぎて子どもに会う時間がないと言うんです。そんな人生にしたくないと思いました。
遅くとも40代にはお金と時間に余裕があり、自分ですべてを決められる人生にしようと決めて仕事をしていました。労働の対価として給与を得るのではなく、1日1日を意識してスキルと経験を積み上げていく働き方。そして1年後、独立支援制度を利用して社内独立の第一号として独立しました。
─知識がない状態からわずか1年での独立は凄いですね
前職でお世話になった会社の社長からたくさん学んだからですね。たとえスキルや知識がなくても、本気で行動すれば見てくれる人は必ずいます。よく「評価されない」と嘆く人がいますが、そもそも評価基準を知らないか、本気で仕事に取り組んでいないケースがほとんどです。
60社の面接に落ちた私でも、正しく努力をしたからこそ経営者になれました。そこで、将来的に独立を考えている人は、経営のスキルを体系的に学べる会社に入るのがいいと思います。決して起業は才能ではありません。
生き抜くためにサバイバル能力を身につける
─これから社会に出る学生や、20代の社会人へのアドバイスはありますか
やはり一度は海外に行ったほうが良いですね。住みなれた日本を出て、まったく異なる文化や価値観の中で生活をする経験は一生の財産になります。20年も日本に住んでいると、常識や価値観の視野が割と狭いんですね。ところが海外で生活をすると、新たな文化に触れることもできますし、違った角度で日本を見ることもできます。
「特に、やりたいことが決まっていない人は、ワーキングホリデーや海外での生活がおすすめ」
─海外での経験は人生だけでなく仕事にも活かされると思いますか
まず、住み慣れた日本にいる限り、よほどストイックでないと自分を追い込めないじゃないですか。まったく英語が話せなくても自力で家を探したり、街で声をかけて仕事を探したり、自らなんとかするサバイバル力は大きな武器になります。それは起業はもちろん、その後のあらゆる困難にも負けない精神力が身につくんです。さらに、サバイバル能力があれば好きな国で働くこともできます。
─可能であるか不可能なのか、決めつけてしまうのはどちらも自分ということですね。とても貴重なお話をありがとうございました。
会社名 | 株式会社アローズ |
住所 | 東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビル32階 |
代表 | 二谷 誠 |